真夏の夜の夢
きある 様
オレ、高橋啓介!
ただいま青春真っ盛りの16歳。
自分で言うのもなんだけど、結構いいオトコだと思ってる(笑)

え?もうちょっと知りたい??
しょうがねえなぁ、特別だぞ。

家はG県T市。病院やってる両親とアニキが一人。
このアニキって言うのが超オットコ前でさぁ。
あ、いや、オトコのオレが言うのって変かもしれないけど、でもほんとカッコイイんだぜ。
最近クルマの免許とって、真っ白なFC乗ってんだけど、
地元じゃ「赤城の白い彗星」とか呼ばれちゃってカリスマなんだ。
アタマもいいし、顔立ちもそこら辺のオンナなんか目じゃないぜってくらいで。
弟のオレとしては鼻も高いし、憧れの存在って感じ。
ああ、オレも早く免許取れる年になりてぇぇぇ!!

いっけね、話が脱線しちまったな(苦笑)
どうもアニキのことになると自慢したくなっちまうんだ。わりぃな。
で、なんだっけ? あ、オレのことか(笑)

オレはそこら辺にいる普通の高校生の上ランクくらい、かな。
おい、笑うなよ! これでも結構モテルんだぜ!!
学校は男子校だけどさ、近所の女子高連中の間じゃ
「○○高の高橋」って言えば通じる超有名人なんだからな。
当然、ラブレターだっていっぱいもらってるし、
告られたことだって数えきれないくらいある。
でも、なぜだか彼女にまで発展する子っていねえんだよなぁ…。
周りの奴らみたいに『彼女ほしい病』でもないし<これナイショな
大体オレ自身、アニキみたくかっこよくなるのが夢だからさ。
まだまだ自分のことだけで手一杯なわけで…。

かっこよくなるにはどうするか
免許は法律で決まってるから取れねえけど、
とりあえず勉強がんばって<アニキお世話さまです(笑)
スポーツ万能で<これは自信あるんだ(^^)v
あとはやっぱ、見た目で勝負じゃん。
素材はイイ線いってると思ってるから、あとはファッションだよな。
毎月じゃないけど、メンズ系のファッション誌は購入してるし、
クラスの奴らとも情報交換は欠かさないぜ。
で、最近はまってるファッションがジャーン!!<ってメールじゃ見えねえか(苦笑)
ずばり木○拓○風って感じ。
カジュアルに決めてっけど、どことなくオトコの色気ってもん漂わせる!
これが今のオレのイチオシだね。
実際、オレの普段着はこれを手本に決めてるし。
さすがに革のパンツとかは履かねえけど、ピッタリめのTシャツに
ビンテージのジーンズ合わせたりしてさ。
そんで、このファッションのポイントは「パンツを見せること」
パンツって下着の方、な(笑)
普通のトランクスとか、ましてやブリーフじゃダメダメ!
オレらの間じゃボクサータイプ履くのが定番だね。もち、ブランド物のみ!!
ブランドっていっても、しょせん下着だからそんなに高くねえし。
ジーンズを腰履きにすると、ちょうど下着のロゴが見えるくらいのバランスがオレのお気に。
ちょっとヘソとか見えちゃうけど、オトコだから問題ないじゃん。

今夜アニキ峠行くって言ってたから、こっそりギャラリーしに行くんだ!
いつもは乗せてってもらうんだけど、友達も連れて行くから。
そいつの兄さんのクルマで行くことになってるんだ。

今日は外も蒸し暑いし、パーカ着ないで、このまま行っちゃおうっと。
あ、ケイタイ鳴ってる。ちょっと待ってて。

すぐそばまで迎え来てるっていうから、ちょっと行ってくるな。
また明日メールするよ。
じゃな


はぁ・・・。
今日は<いい知らせ>と<悪い知らせ>があるんだ。
どっちから話そうかな。
お楽しみはあとに取っといて、まずは悪い方・・・。

昨夜ギャラリー行くって言ってただろ?
確かに行くには行ったんだ。
もちろんアニキに見つかんないようにこっそりとさ。

なんだか、結構な人出でさ。そんな遅くに着いたわけじゃないのに
いいポイントみんな取られてて・・・。
友達は、とりあえずそこでがんばるって言うから、
なんかあったらケイタイに連絡ってことで別行動にしたんだ。
で、オレなりに考えて、ギャラリーポイント見つけたんだけど・・・。

・・・・・。
なんか話すのヤになってきたなぁ(泣)
ま、いっか。

そこのポイントはオレのほかにも、3〜4人の先客がいて。
路肩にクルマ並べて止めてあったから、連れなんだろうなって思ってたわけ。
クルマ自体はたいしたことなかったんで、『ふ〜ん、走り屋かぁ』くらいでさ。
ただ、なんて言うの?そいつら結構ヤバそげな感じだったんだよ。
人のことジロジロ見るし。
因縁つけられてもたまんねえけど、このポイント離れる気にもなんなかったから
そのままシカト決めこんでたんだ。

けど・・・一人が寄ってきたんだよなぁ。
しかも「こんな夜中に一人でヘソ出しルックじゃまずいんじゃな〜い?!」って
よくわかんねえこと言いながら。
ここで騒ぎ起こすとアニキに迷惑かかると思ったから、カチンッてきたけど
放っておいたんだ。
心の中じゃ『はぁ?ヘソ出しルックだあ??』って思いきり毒づいたぜ。
きっとそれがまずかったんだろうなぁ。
モロ顔に出ちまったみたいでさ<よくアニキからも言われてるのに・・・
「おう、きれいな兄ちゃんよぉ。いきがった顔見せてんじゃねえぞ」
って一言でブチ切れた!
オレは顔立ちいい方だと思ってるけど、綺麗とかいうオンナの誉め言葉使われんの
ぜってえお断りなんだ!!
オレはオトコだ、なめんじゃねえ!!!

で、ついぶん殴っちまったんだよ、そいつを。
したっけ、連れの奴らが寄って来ちまって<当たり前なんだけどな(苦笑)
別にケンカ弱くはねえよ、多分。あんまりやんないからわかんないけど。
にしても1対4じゃ、どうにもなんねえじゃん。
しかも、普通のケンカとは感じが違くてさぁ。
殴ったり、蹴ったりしてこねえで、やたらと押さえ込もうとするんだよ。
しかも人気のない方、ない方引っ張ってくし。

そうだ!ケイタイ!!
って思って、リダイヤル押して。
そのまま話せる状況じゃなかったけど、とにかく押したんだ。
一緒に来てた友達が気づいてくれますようにって。
オレ無宗教だけど、神さま仏さまって心境だった。

そして、アニキ、助けてくれ!!!! って。

そしたら、そしたらさ・・・聞きなれたロータリーサウンドが聞こえてきて
アニキの白いFCが、オレたちのすぐそばに、ものすごい勢いで滑り込んできたんだ。
もう、まさに神業って感じのスピンターン決めて。

一瞬の静寂のあと、ゆっくりドアが開いて、アニキが降り立った。
なんか、青白い炎みたいなのがゆらってした気がした。
こんな状況下なのに、綺麗だなって思っちまった。
さっきオレの言った、オンナを誉める綺麗とは違う意味で・・・。
見とれていたのはオレだけで、気がついたら相手は固まってた。
一歩一歩近づいてくるアニキ、後ずさる連中。
「オレの弟に何か?」
この一言が決め手となったみてえで、やつら何も言わずクルマに飛び乗って
すげえ勢いで峠を下って行っちまった。
そりゃそうだよな、アニキ見たさに峠に来てんのに、その弟にちょっかい出したと知ったら
顔面蒼白にもなるってもんだよな。
ザマアミロ、いい気味・・・・・。

え? アニキ?
今オレのこと張った??
一瞬の出来事だったけど、左頬に鋭い痛みが残ってるし、振りぬかれたアニキの右腕見て
やっぱり引っ叩かれたんだと思う。
ちょっかい出してきたのはあいつらの方だぜ?
なんでオレのこと叩くんだよ???

この日、峠でアニキの走る姿はとうとう拝めなかった。
なんかしらけムードだったな。
でもその原因は、オレ。
なんかすげえ自己嫌悪・・・。
以上が、<悪い知らせ>の話。

気持ち切り替えるから、ちょっとタンマな。       




・・・・ちょっと落ち着いたから続き話すな。
まだ頬っぺたはちょっと痛いけど(苦笑)

ケイタイで友達に連絡とって、とりあえず合流してさ。
「今日はアニキ走らないと思う」って言ったら、驚いてた。
理由聞かれたけど、答えなかった。答えらんなかったって方が正解。
帰り支度してたらオレのケイタイが鳴ったんだ。
着メロでアニキからだってわかった。
出るのためらったけど、いつまでも鳴り続けるそれを無視できなくて。
案の定、帰るって連絡だった。
でも意外だったのは、一緒に帰ろうって言われたこと。
怒ってたんじゃなかったっけ?
とりあえず、今いる場所を伝えて電話を切った。

理由話して、友達には先に帰ってもらった。マジで悪いことしたなぁ。
そんなに待たないうちに、ロータリーサウンドが聞こえてきて
今度は普通の速度で、俺の目の前で止まったFC。
助手席に収まったけど、なんか居心地悪ぃ。
峠を下ってる最中はずっと会話なかった。

最初の信号で止まったとき、アニキが先に口火を切ってきた。
「まだ痛むか?」
ビックリして、思いっきりアニキの横顔見ちゃったよ。
アニキは前向いたまんま。
でも、表情はいつもと変わんないみたいだな。
「・・う、うん。平気」
ホントはまだ痛かったけど、そんなこと言えなかった。
でも意外なことはまだまだ続くんだ。これはまだ序の口。

「さっきは悪かったな」
えええ???
「気が立ってたから、つい、な」
もう何がなんだか・・・。とりあえずアニキの話を聞くことにした。
でもこれだけは聞かないと。
「なんであそこにオレがいて、しかもピンチだってわかったんだよ?」
あの時はホントにビックリしたんだからな。
「俺のケイタイ鳴らしただろ?」
え?!慌てて自分のケイタイのリダイヤルを見てみた。
ホントだ、アニキの名前が出てる・・・。
「お前からの着信なのに無言だから不審に思ってな。
 よく聞けば争う声が聞こえてきて焦ったぜ」
場所はどうやって特定したんだ?
「とにかくFCで出ようとしたとき、メンバーから連絡があって
 お前の居場所がわかったってわけさ」
なるほど、これで謎が解けた。
さすがのアニキも超能力者ってわけじゃなかったか(苦笑)

「ゴメンな、アニキ。せっかく走りに来たっていうのに、オレのせいで・・・」
これだけ言うのが精一杯だった。ホントに申し訳なかったからさ。
あんなにギャラリー出てたのに。
「気にするな、とは言えねえが、反省してるようだから今回は許そう」
ほっ、よかった。
「だけどな・・・」
え?続きあり??
「お前、そんな格好して夜の峠になんか来るな。今回の一件の引き金はお前だぞ」
そう言われて改めて自分の服装を見直した。
チビTにビンテージジーンズに・・・ヘソ出し・・・。
「さっきのやつらは、あの峠じゃ有名なんだ。もちろん悪行の方でな」
・・・・!!!!
じゃ、なに?オレ、その、なんだ、ケンカじゃなくって襲われそうになってたってこと?!
が〜ん、超ショック。うわぁ、立ち直れねえじゃん。
オトコに襲われちまったんだ。未遂とはいえ大ショック(泣)
くっそぉぉぉぉ。

ここで会話が途切れて、でももう家のすぐそばまで帰ってきてた。
ガレージにクルマが入っても、オレは下りもせず、そのまま助手席でしょんぼりしてたんだ。
そんなオレに気がついたのか、アニキがドア開けてくれてさ。
「帰るぞ、ほら降りろ」
言われるがままに、立ち上がったけど、でも・・・。
その時だった。
アニキが、オレのことふわっと抱きしめたんだ!
ホント、壊れ物に触れるようにって表現がぴったりな感じで。
ビックリして固まってるオレの耳に流れてきたアニキのセリフは
「あまり心配させるな。お前は俺の宝物なんだからな」

宝物?!オレがアニキの??
ビックリしたけど、恥ずかしかったけど、でも超嬉しかった。
あんまり嬉しくて、ちょっと泣けてきた。
アニキは、小さい子供をあやすみたいに、オレの頭をポンポンってしてた。
今夜のイヤなこと全部吹っ飛んじまった。
そんでもって、すごく幸せな気分のオマケ付き☆

これが<いい知らせ>の話。
なんか、どうやって表現したらいいかわかんなかったから
再現ドラマ風になっちまったな。
読みづらかったらゴメンな。
でも、オレは今、本当に幸せ気分満喫中なんだ。
大好きなアニキの『宝物』だもん!
アニキはオレにとって存在の全てだって、そう言おうと思ったけどやめた。
なんか告ってるみたいで恥ずかしかったし(苦笑)
でも、オレはアニキのこと世界で一番大好きだし、誰よりも大切だぜ。
きっと気がついてると思うけどな・・・。

アニキがやめろって言うから、ヘソ出しはやめるんだ。
少なくとも、夜は絶対しない。
迷惑かけたくねえもん。
嫌われるのヤだし。

あ、もうこんな時間か。
そろそろ寝るわ、オレ。
いろんなことあって疲れちゃったし。

またいつかメールするよ。
それまで待っててくれよな!

じゃ、おやすみ・・・。             おしまい


きある様vv かわいい啓介ありがとうございます(^^) 
この素敵なお話のきっかけは「どんなパンツはいているんだろうね?」だったような記憶があるんですけど(笑) ああ…でも、啓介かわいいーっ 
今度はアニキのパンツのお話ねだっても良いですか?ヾ(・・;)ォィォィ  by葉月

啓介可愛いvテイクアウトしてグリグリ(あ。頭ですよ/笑)したいくらいvその後彗星様に葬られても本望です(笑)
可愛いお話ありがとうございましたm(_ _;)m私も涼介編が読みたいです(笑)コメント入れるのが遅れて申し訳ありませんでした。 by.みこと



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