ワイン side 啓介 南 様 |
「おい、高橋。この論文なんだけどさ・・・」 友人のレポートに目を通そうとした時、不意に涼介の携帯電話が着信を告げた。 「悪い、ちょっと待て」 取り出してみると、ディスプレイには“啓介”と出ている。 浅く溜息をつき、無視することを決めた。 携帯はしばらく鳴っていたが、やがて諦めたように静かになった。 じゃあ、論文に取りかかるかと思った時またしても携帯が鳴り出した。 またしても啓介かと思ったが、今度は史浩からだ。 一瞬出ようかとも思ったがと、りあえず無視して友人の論文に取りかかる。 だが、鳴っては止み、鳴っては止む着信音がどうしても気になるのは仕方ない。 「なあ、出たほうがいいんじゃないのか?」 終いには友人の方が音を上げた。 「悪い・・・」 大きく嘆息すると涼介は携帯を手に教室を後にした。 自販機のコーナーまで来て漸く通話ボタンを押した。 「史浩・・・頼むから啓介みたいなマネは止めてくれ」 疲れ果てたような涼介の声を気にすることなく史浩がしゃべり出す。 「悪い。お前、今日家に帰れるか?」 「無理だな。まだかなり残ってる」 「そこを何とかして帰ってくれないか?」 いつになくしつこい友人に嫌な予感が涼介を襲う。 「何かあったのか?」 「啓介がギャラリーと喧嘩したんだよ」 「そんなの別に珍しいことじゃないだろう」 有名税というのか、レッドサンズに文句をつけて来る奴は少なくない。 自分がいるときは相手にさせない様にしているが、たまに涼介のいない時を狙ってくるやつもいる。 そんなときは大抵啓介が腕力で黙らせていたことも知っている。 「いや、今回のはいつものとはちょっと違うんだよ」 「何がだ?」 「相手が重症だ」 史浩の言葉に涼介の眉間にシワが寄る。 いくら啓介が喧嘩っぱやいと言っても加減はわかっているはずだ。 相手に重症を負わせたことなど一度もない。 「理由は?」 「お前だよ」 電話口で史浩が溜息をついた。 「お前のことを馬鹿にされた啓介がキレた」 なんとなく想像していた通りの答えに涼介は心の中で溜息をついた。 あの弟はいくら言っても聞かないのだ。 自分が馬鹿にされたよりも相手に対する怒りは激しい。 「それで、啓介の様子は?」 「とりあえず興奮して手がつけられなくなっていたから俺が送り届けておいた。FDも返しておいた」 「分かった」 史浩がそこまで言うのなら相当なのだろう。 ざっとレポートの所要時間を計算して家に戻ることを決める。 「ああ、史浩。悪いが啓介とやりあった奴のデータを送っといてくれ」 その台詞に史浩が苦笑混じりに答えた。 「ほどほどにしておけよ?」 「ふ、自業自得だろう」 つくづく涼介が味方で良かったと思う史浩だ。 敵にまわした時の恐ろしさは身近にいるほうが良くわかる。 何とかして涼介を引き留めようとする友人達を見捨てて家に戻った涼介だが、家には明かり1つついていなかった。 「寝たのか?」 啓介の部屋を覗くがそこはもぬけのからだった。 念のためと自分の部屋も確かめるがそこにも姿は見当たらなかった。 「リビングか?」 もう一度階下に行き、リビングのドアを開けた。 「啓介?」 暗闇に倒れている姿を見つけ慌てて電気をつけ、啓介に駆け寄った。 近くまで来るとアルコール臭が鼻につく。 「飲んだな・・・」 とりあえず脈が正常なのを確かめると自分の着ていたシャツをかけ、 そこらじゅうに散らばっている空き缶や瓶の片づけを始めた。 しばらく1人でカチャカチャやっているとその音で気付いたのか啓介が目を開けた。 「んー・・・あえ・・・・アニキ・・?」 気だるげに体を動かすとするすると涼介に近づく。 「目が覚めたか。いくら暖房が入ってるとはいえそんなとこで寝てると風邪ひくぞ?」 「ん〜・・・えへへ・・アニキだvv」 そしてそのまま後ろからぎゅっと抱き付いてくる。 「コラ、片付けができないだろう?」 ぎゅっと抱き着き、首筋にすりすりと頭を寄せて甘えてくる啓介に苦笑し腕を外させようとするが啓介はますます強い力で抱きついてくる。 「やだ。いいじゃん片付けなんて・・」 「啓介」 「・・・・」 アルコールのせいでいつもより高い体温はくっついてきた時同様いきなり離れていく。 不審に思って振りかえった涼介は再びボトルに手を伸ばそうとする啓介を見、止めようと立ちあがった。 「もう止めておけ」 そう言うはずだった涼介の言葉は突如流れ込んできたワインに制止された。 「?!!」 芳醇な香りが喉を焼くように通りすぎていく。 「これでアニキも同罪vv」 などと言ってぎゃはははと笑う酔っ払った啓介に涼介は頭を抱えたくなる。 「・・・・怒った?」 黙ったままの涼介に不安を覚えたのか啓介が上目遣いで尋ねてくる。 それに“怒ってないさ”と返して、涼介は抱きついたままの啓介を引き剥がす。 だが、啓介はまた抱き着いてくる。 「一緒に飲も?」 涼介の首に両腕をまわし、甘える様に上目遣いでおねだりだ。 「また今度な・・・」 それを疲れた様に溜息をつきやんわりと断る。 いつもなら文句を言いつつも素直に諦めるのだが今日はちょっと違っていた。 「う〜〜やだっ!!飲まないと絶交だかんな。もうアニキとHなんてしないもん」 絶交って・・・ しないもんって・・・ いくつのガキだ、と涼介はこめかみを押さえた。 「飲むの〜!!」 既に啓介の口調は幼稚園児だ。 目は潤み、頬は上気して薄く染まっている。 体重をかけて涼介にしなだれかかってくる体は涼介の理性を刺激している。 どうしたものか・・・と思案していた涼介に啓介がキレた。 すっと離れるとテーブルの上においてあったワインのボトルを掴む。 またしても涼介は乗り遅れた。 制止する暇もなく啓介がボトルを逆さまにする。 深紅の液体が啓介の体をつたい、床に落ちた。 呆然としたまま自分を見ている兄に向かって啓介は誘うような色を浮かべた。 舌をのぞかせて唇を舐める。 視線はもちろん涼介の方を向いたままだ。 「舐めてくんないの、アニキ?」 その凄絶な色香に涼介の理性が崩れ落ちた。 飛びかかるようにして啓介の体を床の上に押し倒した。 「お前が挑発したんだ。責任はとるんだろう?」 獰猛な雰囲気を全身から漂わせ、啓介を見つめる。 啓介はそれを臆することなく真正面から見返し、自ら涼介の唇に口付けた。 「アニキこそ満足させてくれるんだろう?」 今まで子供の様だった姿は何処へやら・・・ 不適な啓介の様子に涼介も笑みを浮かべた。 「誰にものを言ってるんだ?」 end |
南さんーっありがとうございました!け…啓介、色っぽいっ!その啓介に惚れられるアニキはやっぱりかっこいい!!うっとり・…(>_<) 南さんのサイトにはワインに濡れるアニキのお話が掲載されています。もし、まだの方がいらっしゃいましたら、是非お出かけください!お勧めです!! by.葉月 艶っぽい啓介をありがとうございました!アニキも素敵です〜v私ってば、ワインを飲むたびに思いだしてニヤニヤしちゃいそうです(笑)南さん!素敵なお話ありがとうございました(^-^)
コメントを入れるのが遅くなってしまって、すみませんでしたm(_ _;)m by.みこと
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