キリリク*高橋兄弟高校生編
『保健室/後編』




(……我慢も限界だな)
 涼介は不意に啓介の目元に口付け、耳を指でつまんだ。
優しく愛撫を施すと、啓介はちょっと首をすくめて見せる。
「啓介」
 いつもの声とは違う、恋人の声で啓介の名を呼ぶ。
 その声色に啓介の頬が瞬時にして赤く染まった。
「ア、アニキッ」
 慌てて涼介から離れようとする、その肩をつかんで抱き寄せ、かすめるように唇に口づける。
「ここですんのかよ?」
 とがめるような口調だが、そんなことを気にする涼介ではない。
嫌だと言われてもやめてなどやるものか。
そう思いながらも、一応お伺いをたててみた。
「嫌か?」
「うぅ〜っ」
 啓介はなにやらうなって、ついでにさらに顔を赤くして、丸くなる。
その仕草がよけいに涼介をあおる。
もっともっと困らせて、いじめたくなってしまう。
「でも………」
「大丈夫だ。鍵ならかけておいた」
 涼介は啓介が保健室に入ってきたと解った瞬間に、すぐ行動を開始した。
そっと身構え、啓介がカーテンを引くのを合図にこっそりと逆側から出た。
そして目的を果たし、同じようにカーテンをまくり上げ、ベットへと座ったのである。
時間にしてほんの2分程度だ。不可能な事ではない。
「心配は必要ない」
 もともとこの部屋の主はいないのだ。
涼介が留守番をしているとはいえ、ここに来た学生に治療を施す訳ではない。
ただ、具合が悪くて訪ねてきた者が休めるようにと、開けてあるだけだ。
校医の不在をいいことに、薬品やベットが悪質利用されないように涼介が見張りをしていたのだけど…。
 こうして番人が使ってしまうのだから、あまり意味がなかったようである。
灯台もと暗しってやつだろうか。
「誰も来やしねーさ」
 丸くなった啓介の背中をあやすように撫でながら、
言い聞かせるようにささやく。
「オレ、隣にアニキがいるなんて気がつかなかったのに」
「俺はすぐ解った」
「なんで?」
「だってお前、あいさつして入ってきただろう?」
「あ、そっか」
「それより……」
 涼介はこっちが優先だと言わんばかりに、
啓介の顔に指を添え少し強引に自分の方を向かせる。
「啓介」
 愛しい愛しいその名を大切そうに呼び、啓介の唇を優しく塞いだ。
開くのを促すように舌先で唇を舐めてやる。
「……つ」
 濡れた感触に身震いしつつ、
啓介はためらいがちにゆっくりとその唇を開いた。
「んっ」
 スルリと中へ入り込む。
啓介の舌はいつでもほんのり甘くて、涼介を夢中にさせる。
柔らかい舌を優しく愛撫しながら、そっと目を開けてみた。
震える睫が頬に長い影を落とし、上気した頬が艶をかもし出す。
ギュッと瞳を閉じて、懸命に自分に応えてくる様子が、
涼介をなんとも幸せな気持ちにさせた。
(誰にも見せたくねーな)
 つくづくそう実感しながら、涼介は啓介とのキスを思う存分楽しむ。
追いかけて、捕まえて……離さない。
「んん!」
 あまりにしつこい涼介のキスに、だんだん息が苦しくなってきた。
啓介は涼介の肩をグッと手で押しやり、苦しいと主張する。
それに従順に応じ、涼介は意外すぎるほどあっさりと啓介の唇を離す。
「…ふっ」
 涼介は自分の肩にあてられていた手を取り、不敵に笑いながらささやいた。
「なんだ、もう降参か?」
 啓介は濡れた唇を空いてる手の甲で乱暴に拭い、上目遣いに涼介を見る。
 キスだけですっかり熱くなってしまった身体がもどかしい。
なにか一言ぐらい言ってやろうと懸命に乱れた息を整えて口を開く。
「……アニッ」
その言葉を遮るように、涼介は啓介の指先に口づけた。
爪先に強めに噛みついてやると、啓介の身体がピクリと揺れた。
 涼介は、啓介の抵抗がないのをいいことに、
横になっていたその身体を易々と仰向けにさせる。
そのまま自分の下へと引き込み、真っ白なカッターシャツへと手をかけた。
涼介の指先がボタンを次々と外していき、そのたびに爪先が少しだけ肌に触れる。
啓介は、つい胸の辺りに神経を集中してしまって……
「あっ」
 思わず声が出てしまった。
たったそれだけのことに反応してしまったことが恥ずかしくて、
啓介はキュッと唇を噛みしめる。
 涼介はシャツのボタンをすべて外し終わると、せわしなく上下している胸へと触れた。
しっとりとした肌の感触を楽しむように下からなで上げ、行き着いた可愛らしい飾りを指でつまむ。
「ん!」
 ぷっくりとしたそれを優しく擦ってやると、啓介の身体が微かに震える。
涼介はもう片方にも指を添え、左右違うリズムで愛撫を施した。
「………つっ」
 胸を中心に痺れに似た快感が広がる。
男も胸が感じるなんて、涼介とこんな関係になるまで知らなかったことだ。
「あ…っ」
 的を得た指先の動きに翻弄されながら、啓介は咄嗟に「まずい」っと思った。
保健室なんて、普通の教室と同じ作りになっているのだ。
防音なんてしてある訳がない。
誰にも見られなくても、声を聞かれてしまう可能性がある。
 啓介はなるべく声を出さないようにと、己の手を口元へ持っていきシャツの袖口を口に含んだ。
「んうっ」
 きつくきつくそれを噛んで、声が出ないように頑張る。
涼介はそんな啓介の胸に慈しむようなキスをして、
手を下方へと滑らせていった。
(……あまりじらさない方がいいな)
 声を我慢するというのは、意外と体力を使う。
場所が場所だけもっと楽しみたい……という気持ちはあるのだが、
ただでさえ疲れている啓介に無理をさせるのも忍びない。
涼介は素早くスラックスのボタンを外し、下着へと手を差し入れた。
「……啓介」
 やんわりと握り込まれ、啓介の腰から力が抜ける。
そのまま緩やかに扱かれて、ダイレクトな快感が身体を駆けめぐった。
「んんっ……ん!」
 涼介は休むことなく愛撫を施しながら、伸び上がって啓介の額にキスをした。
きつく閉じられていた瞼が上がり、濡れた瞳が現れる。
「気持ちいいか?」
 その言葉に啓介は必死になって頷く。
涼介はフッといつもの笑みを浮かべると、いきなり啓介の手首を掴んだ。
「つ?」
 瞬間的に強い力で引っ張られて、口からシャツが離れる。
「むっ…りっ……声がっ…………あっ」
 途切れ途切れに訴えて、潤んだ目で涼介を見上げた。
「……俺が聞いてやるよ」
 言葉と共に深く口づけ、啓介の声を自らで封じ込める。
啓介を強く柔らかく扱いてやり、急速に啓介を追い上げていく。
「ふっ……」
 再び閉じられた瞼に押し出され、生理的な涙が目尻へと溜まる。
それは露を結び、つうっと頬を伝い落ちてシーツへと吸い込まれていった。
 涼介は目を開けたまま啓介にキスを施す。
敏感な先端を指先で擦ってやると、啓介の身体が弓なりに反った。
強烈な快感が広がり、ついで到達感が襲い来る。
「んうっ……んんっ!」
ビクビクと大きく腰が震え、涼介の手と啓介の脚の間だに濡れた感触が広がる。
微かな震えと共に最後まで吐き出して、啓介は身体の力を抜いた。
涼介がそっと唇を離すと、酸素を貪るように深い呼吸を繰り返す。
「啓介」
 次に来るだろう行為にそなえ、懸命に息を整えていた啓介の顔に、涼介の長い指が触れた。
さわさわと優しく撫でられ、啓介は小首を傾げつつ涼介を見た。
「………アニキ?」
 なんでやらねーの?と啓介の瞳が語りかけてくる。
「続きは家に帰ってからゆっくりと……な」
「でも……」
 目尻から流れ出た涙の跡をそっと拭ってやり、優しく笑いかけてやる。
「ここじゃ、さすがにまずいだろ」
 チュッと鼻の頭にキスをされて、啓介はくすぐったそうに首をすくめた。
涼介は汚れた手をハンカチで拭うと、啓介のシャツのボタンを留め始める。
心地よい疲労感と涼介のいたわりに安心して、急激な睡魔が啓介を襲う。
 そんな弟の様子を、涼介は幸せな気持ちでながめつつ言った。
「まだ昼まで時間がある。少し眠っておけ」
「……俺たまにはアニキと一緒に昼飯喰いてぇ」
 ゴロゴロと猫のようになつかれて、柔らかな茶色の髪を撫でてやった。
「いいぜ。時間になったら起こしてやる」
「ホントに?」
「あぁ。安心して寝ろ」
「アニキのおごりだろ?」
 期待に満ちた目で言い募る啓介に苦笑しつつ、涼介は大きく頷いてやる。
「やった!」
 啓介は嬉しそうにそう言って、涼介の手を掴んだ。
どうやら眠るのにもつき合わされるらしい。
啓介は幸せそうに微笑むと、涼介の手を握ったままゆっくりと瞳を閉じたのだった。






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 ……お粗末様でした(死)やっとやっとおわりました。
こんなに短いのに、随分時間がかかってしまってスミマセン。
リクエストを下さったあっきーサン!どうもありがとうございましたm(__)m
表で出来る精一杯をやってみましたー(苦笑)
もっとアダルトな物が読みたい方は、是非アンダーサイトへお越し下さい(笑)
                                                  BY みこと


                                                      



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